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おはなしの小道 TALES PASSAGE

『子どもに贈る昔ばなし』より 第7話 うさぎ楽土

   昔むかし、長い長いのこぎりで、えんやほいほいと木を切っているじいはんがいました。
 ある日のこと、いつものようにじいはんは、えんやほいほいと木を切っていましたが、そのうちに、
「ああ、くたびれたなぁ。腹もへったぞ」といって、切りかぶに腰かけました。そして、べんとうの重箱をあけて、
「やぁ、うまそうなにぎりめしだなぁ。さぁ食べようか」と、ひとつつまみました。食べようとしてちょっと前を見ると、草のあいだのでっかいあなから、白うさぎが顔を出していました。うさぎはにぎりめしを食べたくて食べたくてならないという顔をしていたので、じいはんは、にぎりめしをあなの中へころがしてやりました。すると、にぎりめしがあなの中へころがりこんだとたん、

  おむすびころりん すっとんとん

と、うたが聞こえてきました。じいはんは、
(おかしいな)と思って、もうひとつころがしました。すると、また、

  おすびころりん すっとんとん

と、さっきのうたが聞こえたので、じいはんはおもしろがって、にぎりめしをみんなあなの中へころがしてやりました。それからじいはんは、すき腹をかかえて帰り、いつもの何倍も何倍もたくさんごはんを食べました。
 つぎの日もそのつぎの日も、じいはんが、うさぎあなの中へにぎりめしをころがしてやると、いつも同じうたが聞こえてきました。じいはんが、
「そら、もうひとつ、もうひとつ」といって、にぎりめしをころがすと、

  おむすびころりん ころりんころりんすっとんとん

と、つづけざまにうたが聞こえました。じいはんが、
「おもしろいなぁ。おもしろいなぁ」といって、ついには、重箱までころがすと、こんどは、
 
  重箱ころりん ころりんころりんすっとんとん

と、あなの中から聞こえました。
「こいつぁいったい、どんなうさぎがいるんだろう」と、じいはんはあなのふちへ行って中をのぞきこみました。そしたら、足がすべって、じいはんは、あなの中へころげこんでしまいました。 じいはんがびっくりしていると、
 
  じいはんころりん ころりんころりんすっとんとん

と、うたが聞こえてきました。その声におどろいてあたりを見まわすと、あなの中には、それはそれは大きな広間があって、たくさんの白うさぎが、ぺったんこぺったんこと、もちをついていました。うさぎたちは、じいはんの前にずらっとならんで、ぺこぺこおじぎをしました。そして、一番でっかい白うさぎが、
「おじいはん、おじいはん、ありがとうございました。おかげで、毎日、にぎりめしをうまいうまいと食べましたよ。きょうは、正月のもちをついているんです。ゆっくりあそんでいってくださいね」というと、青や赤の着物を着たうさぎたちが、杵をかついでおどりながらもちをつきはじめました。うさぎは、臼のまわりをとんだりはねたりしました。杵を持ちかえたり、まわしたりもしました。ぺったんこぺったんことつくと、手返しをするうさぎがもちを返しながら、ときどき、もちを上のほうへふりあげては、うまく臼の中へ落としました。そのあいだに、ほかのうさぎが声をそろえて、

  おすびころりん すっとんとん 重箱ころりん すっとんとん
  じいはんころりん すっとんとん ぺったんぺったんすっとんとん

と、くり返してうたいました。じいはんは、すすめられて、うさぎがついたもちを食べました。もちはおいしくて、ほっぺたがおちそうでした。じいはんが家へ帰ろうとして、お礼をいうと、うさぎはおくから小槌を持ってきて、
「おじいはん、何かほしいものがあったらこの小槌をふってください。小槌からなんでも出てくるんですよ」といって、小槌をくれました。
 おおよろこびで家へ帰ったじいはんが、ばあはんとふたりでならんで、
「ばあはん若くなれ、じいはん若くなれ」と、小槌をふると、ふたりとも腰がのびて、しわがなくなって、りっぱな若者になりました。
「こんどは、赤んぼうがほしい」と、ばあはんがいうと、じいはんも、
「そうだね。赤んぼう出ろ、かわいい赤んぼう出ろ」といって、小槌をふりました。すると、それはそれはかわいい赤んぼうが、男の子と女の子とふたり、ぴょっこりぴょっこりとびだして、
「おぎゃぁ、おぎゃぁ」と、泣きました。
 じいはんとばあはんは、うれしくて、ひとりずつ赤んぼうをだいておどりました。それから、きれいな家やお金をふりだして、四人でなかよく幸せにくらしました。
 これで、むかしきり

『子どもに贈る昔ばなし9 うさぎ楽土』(小澤昔ばなし研究所、2008年)より

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