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おはなしの小道 TALES PASSAGE

『子どもに贈る昔ばなし』より 第3話 食わず女房

  食わず女房 (岡山県真庭郡)

 むかし、あるところに、男がひとりでくらしていた。人がいくらよめをもらえとすすめても、たいへんよくふかなので、どうしてももらおうとしなかった。

 ある日、年ごろのむすめが、
「わたしをよめにしてください」と、やって来た。
「ふん、そりゃあよめにしてもいいが、わしはよめに食わせるのがおしいから、それでよめをもらわないんだ」
「わたしは、すこしも食べさせてもらわなくていいんです」
「めしを食わないよめならおいてやろう」

 むすめはよめにしてもらった。そのよめは何日たってもほんとにめしを食わない。
 ある日、男は、(どうもふしぎだ。こんなにめしを食わずに生きているわけがない)と思って、あまだに上がってかくれて見ていた。すると下でよめが、大きな五升(ごしょう)なべでめしをたいた。
 男は、(めしを食わないといっていたのに、どうするのだろう)と思って見ていた。よめは、五升なべにいっぱいたいためしでにぎりめしを作りはじめた。そして、しおをつけてにぎって、ぽういとほうり上げては、カプッと食い、ぽういとほうり上げてはカプッと食い、とうとうみな食ってしまった。 
 男は、
(こいつはかなわない。こんな大食いをやしなっていたら、食いつぶされてしまう。なんとしてもひまを出さなければならない)と思い、知らん顔して、あまだから下りてきてよめにいった。
「いままでよく世話をしてもらったが、今日かぎりでひまを出すから、出ていってくれ」するとよめは、
「わたしがおしかけて来たのだから、ひまを出されてもしかたない。出ていくかわりに、わたしが入れるくらいのおけをひとつこしらえてくれ」といった。男は、
「そりゃまあ、それくらいのことはしてやろう」といって、おけをひとつこしらえてやった。よめは、
「よいおけができた。ためしに入ってみてくれ」といった。男は、おけに入って、
「いいぐあいだ。すわるとちょうどいい大きさだ」といった。よめは、
「ほんとにちょうどいい」といって、よいしょとおけをかついで、どんどんどんどん走りだした。男は、
「おろしてくれ、おろしてくれ」と何度もいったが、よめはおろしてくれない。男がどこへ行くのかと思っていると、山のおくへおくへとかつがれて行く。どうにかしておけから出ようと思っていると、木のえだが、どおっと頭の上にはりだしている所に来た。
(今だ)と、そのえだにつかまって、おけからぬけ出した。よめは男がぬけ出たことに気がつかず、どんどんどんどん、おけをかついで、山のおくへおくへ入っていった。

 男は、どこへ行くのか見とどけようと、えだからとびおりて、後からついて行った。
 よめは、山のおくにつくと、おけをおろして、
「やれやれもどった。子どもたち出てこい。おいしいごちそうを取って来てやったぞ」といった。するとくもの子が、たくさん出てきて、そのおけのふちいっぱいにはいあがった。
「中に何もいないよ」と、くもの子がいうと、よめは、
「いないって。いないはずはない。どこでにげたんだろう。まあいい、今夜、いろりの自在かぎから下りて、取って来てやるから待っていろ」といった。

 男は、それを聞いて、急いで家へもどった。
(こまったことになった。どうしよう)と思って、となり近所の人に、
「うちのよめは、くもだった。今夜、自在かぎからおりて、わしを取りに来る。みんな、助けてくれ」とたのんだ。となり近所の人たちは、
「そりゃたいへんだ、助けてやろう。いろりに大なべをかけて、湯をぐらぐらわかしておこう。くもが自在かぎから下りてきたら、みんなでその湯の中へたたきこんでやろう」といった。みんなよりあつまって、いろりに大きな火をたいて、大なべで湯をわかして待っていた。
 すると、小さなくもが、自在かぎを、チョロチョロ、チョロチョロと下りてきた。
「これだ」といって、みんなでつついて、大なべに落とした。みんなで落とすほど大きなくもではなかったが、にえたくもを見ると、大なべいっぱいあるような大きなくもだった。
 こうして男はみんなに助けられたそうだ。

むかしこっぽりとびのくそ

『子どもに贈る昔ばなし3 食わず女房』(小澤昔ばなし研究所、2005年)より

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