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おはなしの小道 TALES PASSAGE

『子どもに贈る昔ばなし』より 第1話 ねこと犬とさるのたからもの

  ねこと犬とさるのたからもの(沖縄)

 むかしある所に、母親とひとり息子が住んでいました。息子は、おさないころは少し知恵がたりなかったけれども、せいちょうするにつれて知恵がついてきました。ある日のこと、息子は母親に、
「わたしはこの村ではかせげないから、よその村へ行ってかせいでくるので、旅に出るお金をください」といったそうです。

 家はまずしかったけれども、息子は母親からお金をもらって旅に出ました。村を出て海辺(うみべ)をわたり、西海岸へ向けて山道を歩いていきました。しばらく行くと小さな村があり、子どもたちがねこをいじめているのに出会いました。
 息子は、ねこをかわいそうに思って、母親からもらったお金でそのねこを買い取りました。そして、
「もう、ここに来るんじゃないよ。子どもたちにつかまらない所へ行きなさい」といって、ねこをにがしてやりました。

 息子はお金がなくなったので、家へ帰ってきました。
「どうしておまえはもどって来たんだ」と母親にきかれ、息子はねこを買いとってにがしてやったことを話しました。
「ああ、おまえはもう、いくら動物がかわいそうだからって、どうしてそんなことまでするんだい」といわれて、息子は何も答えられませんでした。
 少し日がたつと、息子は母親からお金をもらって、また旅に出ました。
村を出て海辺をわたり、西海岸へ向けて山道を歩いていきました。しばらく行くと小さな村があり、子どもたちが犬をいじめているところでした。息子はまた、母親からもらったお金で犬を買い取ってにがしてやりました。息子はお金がなくなったので、家へ帰って、母親にわけを話しました。すると、
「ああ、なんてことだ。おまえはほんとうに何の役にもたちやしない」と、しかられてしまいました。

 それからまた少し日がたって、息子は、
「お母さん、どうしてももうけてきたいので。旅に出るお金をください」とたのみました。

 息子は村を出て海辺をわたり、西海岸へ向けて山道を歩いていきました。しばらく行くと小さな村があり、子どもたちがさるをつかまえていじめているところでした。息子はまた、そのさるを買い取ってにがしてやりました。
 息子はお金がなくなったので、家へ帰り、そのわけを話しました。
「おまえはもうどうしようもないから、家ではたらきなさい」と、母親にいわれました。けれども、息子には、よその村へ行ってもうけてきたいという思いがあるので、こんどもまた出かけていきました。

 息子が村を出て海辺をわたり、山道を行き、小さな村にさしかかると、とつぜんさるがあらわれて、
「わたしはさるの大将に、『おまえを助けてくれた人に会ったらつれてきなさい』といわれているので、どうか、わたしといっしょに来てください」といいました。

 さるは、息子を大将の所へつれて行くとちゅう、
「さるの大将があなたののぞみをかなえてやるといっているので、今日はきっとほうびがもらえますよ。その時は、さるのたからものがほしいといいなさいね」と、教えてくれました。

 息子がさるの大将の所に行くと、
「おまえか、このさるを助けてくれた者は」ときかれたので、
「はい、わたしです」と、答えました。
「おまえにほうびをやろうと思って待っていたんだ。のぞむものは何でもやろう。何がいいか」
「はい、ではさるのたからものをください」と、息子は答えました。
さるの大将は、このたからものがないと仕事ができないと心配しましたが、やくそくなのでしかたなくそれを息子にわたしました。

 息子は、さるの大将からたからものをもらって、家へ帰りました。そのたからものは息子ののぞむものを何でも出してくれました。息子はうれしくなって、となりに住んでいるよくばりにさるのたからものを見せました。
 すると、となりのよくばりは、さるのたからもののにせものを作って、本物と取りかえてしまいました。それで、息子の持っているにせのたからものからは、何も出なくなりました。

 ある日、息子に助けられたねこと犬が、息子をたずねてやって来ました。息子が、
「さるの大将からたからものをもらったおかげで、たいそうゆたかになったけれど、となりのよくばりがにせものを作って、本物と取りかえて持っていってしまったよ」と話すと、ねこと犬は、そのよくばりの家に、たからものを取り返しに出かけました。

 ねこと犬は、よくばりのるすの間に家に入り、とだなの中のたからものを取り返しました。帰るとちゅう、犬がねこに、
「おまえは力が弱いから、持って行くとちゅうで、だれかに取られてしまうといけない。わたしが持とう」といって、たからものを口にくわえ、いっしょに歩いていきました。

 とちゅうに橋があって、川の中で魚が泳いでいました。犬はその魚がほしくなり、口を開けたとたん、たからものを落としてしまいました。ねこは、すばやくそのたからものにとびつくと、それをくわえて息子の所へかけて行きました。そして、
「たからものはこれですか」と、見せました。
「そうだ。まちがいない」と、息子が答えると、ねこは、
「あの犬はくいしんぼうです。わたしがうしろについていたからよかったものの、魚を取ろうとして、もう少しでたからものを川の中へ落とすところだったんですよ」といいました。すると、息子は、
「そうか。だいじな家の番はおまえにしかできないな。犬には家の外の番をしてもらおう」といいました。

 それいらい、ねこは家の中、犬は家の外の番をするようになったそうです。
 

『子どもに贈る昔ばなし1 ねこと犬とさるのたからもの』
(小澤昔ばなし研究所、2005年)より

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