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昔話の道しるべ 小澤俊夫の昔話エッセイ GUIDEPOST FOR FOLKTALES

第6回 昔話は三回の繰り返しを好む<音楽と似た性質>

 前回、昔話は同じ場面は同じ言葉で語る、という性質のことを書きました。子どもはもう知っていることに出会うのが好きです。よく知っている絵本を何回も読んだり、よく知っているお話を、また聞かせてと言います。昔語は子どものそういう欲求をよく知っていて、それをきちんと満たしてくれます。
 昔語は、すじの流れのある物語ですから、物語としてのリズムをつくりながら、同じ場面は同じ言葉で語るのです。グリム童話の「白雪姫」では、前回述べたとおり、白雪姫は女王によって一度目はひもで、二度目は毒のくしで、三度目は毒のりんごで最後には殺されます。三回の繰り返しが、ほとんど同じ言葉で語られているのですが、よく読むと、三回目が一番長く語られていることがわかります。そして、一番重要なのも三回目であることは明らかです。なぜなら、りんごで殺されて、生き返らなかったからこそ、王子との結婚が成就したのですから  そうすると、ここにストーリーとしてのリズムが潜んでいることがわかります。それは、タン、タン、タンという、三回目にアクセントのあるリズムです。こういうリズムがあることがわかると、可能性はうんと広がります。
 石を前に投げるとき、人間ならば誰でも一、二、三と投げます。予備動作が二つあって、三つ目で投げます。陸上競技の三段跳びを思い起こしてください。ホップ、ステップ、ジャンプと跳ぶとき、ジャンプが一番遠くへ跳び、一番重要です。「白雪姫」のストーリーのリズムと同じであることがわかります。これらを図解すると、図のようになります。



 音楽にバーフォームという形があります。ヨーロッパ中世の吟遊詩人以来、大変好まれている形で、モーツァルトなども多用しています。二小節、二小節、四小節という形です。シューベルトの「子もり歌」もこの形でできています。このとき、最も強く弾かれるのは、三回目の四小節の中ほどです。つまり、音楽のバーフォームの場合にも、三回目が一番長く、一番重要なのです。
 昔話の中で、どうしてこんな形ができたのかといえば、耳で聞くストーリーとして、それが最も心地よかったからでしょう。音楽の場合にも、特定の人が発明したのでなく、このようなリズムが耳で聞いて心地よかったからです。それが文芸とか音楽という芸術作品が人に与えてくれる心地よさなのです。ところが、実際に市販されている昔話絵本や再話本を見ると、三回を一回にしてしまっているものが多いようです。白雪姫はりんごで一発必中で死ぬ。シンデレラは一回目の舞踏会で靴をなくしてくる(本当は三回目なのに)。これでは、せっかくの心地よいリズムが消えてしまいます。そればかりか、そこに込められた大切なメッセージも消えてしまうのです。
UBBELOHDE:のらくらものの天国の話
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