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昔話の道しるべ 小澤俊夫の昔話エッセイ GUIDEPOST FOR FOLKTALES

第43回 茶目っ気のある小僧さん
 前回は、和尚と小僧のとっさの面白いやり取りを紹介しました。このように茶目っ気があり、頭の回転が速い小僧さんの話はいろいろあって、いずれも、しまいには和尚さんをへこませてしまいます。
 「寒の風」
 昔、冬の寒い日のこと、山寺の和尚さんが、ふと考えた。「今日はえらく寒いが、この寒の風をこのまま取っておいて、夏の暑い日に当たったらいい気持ちだろうなあ」和尚さんは早速、大きな壷に寒の風を入れて、しっかり蓋をした。そして、その壷を押入れの中に大事にしまっておいた。
 春が過ぎ、夏になった。暑い日が続いた。和尚さんは、いよいよあの寒の風に当たる日が来たと思い、押入れから壷を出し、蓋を少しだけ開けた。涼しい風が壷の中から吹いてきた。和尚さんは、「ううーん、これは涼しい」といって、満足だった。
 寺の小僧が、この様子をこっそり見ていた。和尚さんが、「これは涼しい」といって、何やら満足そうなので、小僧さんは、自分も一度壷の中をのぞいてみたいと思った。
 ある日、和尚さんが用事で村へ出かけていった。小僧さんは、「今だ」と思い、和尚さんの部屋へ入って、壷を出してみた。そして、蓋をそっとずらしてみると、涼しい風が吹いてきた。「やあ、これは涼しい。いい風だ」と、小僧はずっと風に当たっていた。
 ところが、そのうちに涼しい風がなくなってしまった。中をのぞいても何もない。「しまった。和尚さんに叱られるぞ」小僧さんはしばらく考えていたが、「そうだ」と言って、壷の中へ屁をたれて、蓋をしておいた。
 やがて、和尚さんが、「暑い、暑い、今日はなんて暑い日だ」といって帰ってきた。帰ってくるなり、部屋へ入り、押入れから壷を出して、蓋を開けた。すると、臭い風がふーっと吹いてきた。
 「おお、臭い、臭い。小僧、お前、この壷をいじったか」和尚さんが聞くと、小僧は何食わぬ顔をして、「いいえ、いじりません。壷がどうかしましたか」といった。
 「この壷にはな、涼しい寒の風が入れてあったのじゃ。それが今日はひどく臭い風になってしまった」和尚さんがそういうと、小僧さんは、「そりゃ、和尚さん、こんな暑い日には、寒の風だって腐るんじゃありませんか」と答えましたとさ。たちに聞かせてやって欲しいと思います。


UBBELOHDE:のらくらものの天国の話
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