Web子どもと昔話 ││ 昔話の道しるべおはなしの小道


昔話の道しるべ 小澤俊夫の昔話エッセイ GUIDEPOST FOR FOLKTALES

第42回 かわいい小僧さんたち
 昔話には、和尚さんと小僧さんのやりとりを語るものがたくさんあります。それはほとんどひとつのジャンルを形成しているので、私たちが作った「日本昔話通観」という日本全国の昔話の集大成でも「和尚と小僧」というジャンルとして認めました。そこには、かわいい、しかし頓智のある小僧さんたちがたくさん語られています。
 「和尚、おかわり」という話があります。
 昔、お盆のとき、あるお寺におはぎの差し入れがあった。和尚さんは食いしんぼで、そのおはぎを一人で全部食べたいと思った。ところが、小僧がいつもそばにいるので、食べられない。そこで、小僧がちょっといなくなったすきに、おはぎを持って、厠へ走っていった。中に入り、しゃがんで、やれやれとおはぎを食べ始めた。
 小僧は小僧で、おはぎが来たので食べたくてしょうがないが、和尚さんが見張っているので手が出せない。そのうち、いつの間にか和尚さんがいなくなったので、「いまのうちだ」と思っておはぎを取った。そして、人に見つからないようにと思い、厠へ走った。
 厠の戸を開けると、そこに和尚さんがしゃがんでいて、おはぎを食べている。小僧はびっくりして、「和尚さん、おかわり」といって、持ってきたおはぎを差し出した。和尚もびっくりして、「おお、そうか、よくもって来てくれた」といい、ふたりで、並んでおはぎを食べたということだ。
 厠の戸を開けたら和尚さんが、しゃがんでおはぎを食べているのを見て、小僧さんはさぞ驚いたことでしょう。とっさに「おかわり」というところが、なんともユーモラスで、しかも、子どもの知恵を感じさせます。
 和尚さんの方も、ばつが悪かったでしょうが、「よくもって来てくれた」といって、小僧を厠の中に迎え入れました。そして怒りもしないで、小僧と並んで、しゃがんだままおはぎを食べたというのですから、ユーモアを解する和尚だったようです。
 この話で何といっても面白いのは、最後にふたりが厠に並んでしゃがみこみ、一緒におはぎを食べたというところです。この場面を、頭の中で描き出してみてください。たいへん面白く、いわゆる絵になる場面です。
 お話を聞きなれていない子は、この話の面白さがわからないまま終わってしまうかもしれません。しかし、だんだん聞きなれていくうちに、話を聞くことの面白さが体得できるようになっていくのです。こんな単純な、しかし面白い話を子どもたちに聞かせてやって欲しいと思います。


UBBELOHDE:のらくらものの天国の話
BACK    NEXT




Web子どもと昔話 ││ 昔話の道しるべおはなしの小道
topへ