Web子どもと昔話 ││ 昔話の道しるべおはなしの小道


昔話の道しるべ 小澤俊夫の昔話エッセイ GUIDEPOST FOR FOLKTALES

第40回 けちを題材にしたひとくち話
 前回までに三種類のひとくち話を、ご紹介しました。このような話は、わざわざ覚えようとしなくても語れるものです。そのとき、話を長くしようとしたり、合理的にしようとしたりすると、つまらなくなります。登場人物にまつわる周囲の状況などを説明しても冗長になり、子どもは聞いてくれません。いわんや、教訓をつけようとしたら全く面白くなくなります。私がここで短く書いたように語るのが一番確実です。
 ひとくち話には、第37回のような一つ覚えの滑稽さを語る話があるかと思えば、第38回のような頓智話もあります。第39回は誇張話でした。けちを題材にしたものもあります。大分には「きっちょむ」とよばれる面白い主人公がいて、けちだったり、頓智があったり、抜けていたりしますが、これはけちな話です。

 ある日のこと、きっちょむさんが、女房に、「おい、隣へ行って金槌を借りてくれ」と言った。女房が隣へ行って、金槌を貸してくれと言うと、隣のおやじが、「貸してやってもいいが、竹釘を打つのか、木釘を打つのか」と聞いた。女房が、「金釘を打つんだよ」と言うと、おやじは、「金釘を打つんでは、金槌がへるから貸せない」と言った。女房はうちへ帰って、「隣じゃ、金釘を打ったら金槌が滅るから貸せないと言ってるよ」と話した。それを聞くときっちょむさんは怒って、「けちなやつがいたもんだ。そんならいい。うちの金槌を使おう」と言ったそうな。

 ある日、きっちょむさんの家に仲間が集まって、食べ物の倹約くらべの話になった。ひとりが、「うちじゃあ味噌だけで飯を食うんだ」と言うと、もうひとりは、「そりゃもったいない。うちじゃあ塩ひとつまみで、飯を三杯食うんだ」と言って自慢した。するともうひとりの男が、「いや、うちじゃあ梅干ひとつで、飯を三杯も食うんだ」と言って、得意になった。きっちょむさんは、これを黙って聞いていたが、やがて、「わしのほうが、元手いらずじゃ。わしは皿に、うんとすっぱい梅干をひとつのせ、ひと目見てはひとくち飯を食い、ひと目見てはひとくち飯を食いして、三杯食うんじゃ」と言った。これを聞いて仲間はみんな、「きっちょむさんが倹約家の親玉だ」と言って、すごすごと帰って行った。

 きっちょむについては、さまざまな話があるので、この二つの話は別々に話しても構わないし、続きの話としていちどに語ることもできます。


UBBELOHDE:のらくらものの天国の話
BACK    NEXT




Web子どもと昔話 ││ 昔話の道しるべおはなしの小道
topへ