Web子どもと昔話 ││ 昔話の道しるべおはなしの小道


昔話の道しるべ 小澤俊夫の昔話エッセイ GUIDEPOST FOR FOLKTALES

第39回 ほら吹きばなしはいかがでしょうか
 昔話には、豪快なほら吹きばなしもあります。昔話はそもそも本当の話と信じられることを求めていないので、ほらとなると、極端なほらにして楽しみます。近代科学の合理性などまったく気にしていません。現代の子どもたちにも必ず喜ばれます。東北のほら吹きばなしをひとつ。
「ほらくらべ」
 むかし、関西一といわれるほら吹き名人が、東北一のほら吹き名人のところへ、腕比べに出かけていった。その家に着くと、小さな女の子が出てきた。そこで、
「わしは関西一のほら吹き名人だが、この家の主人はいるか」ときいた。すると女の子が、「ああ、父ちゃんかい?」というので、「そう、父ちゃんはどこいった」というと、「父ちゃんなら、早池峰山(はやちねさん)が倒れそうなんで、麦わら三本もって、つっかえ棒しにいったよ」といった。
 関西一のほら吹き名人は、「この小娘、生意気なこというな」と思って、「そんなら、母ちゃんはよ」ときいた。「母ちゃんかい。母ちゃんは、海に高潮が来たんで、鍋の蓋持って押さえにいったよ」といった。
 関西一のほら吹き名人は、「この小娘、なんて生意気なんだ。よし、それならこっちもおおぼら吹いてやれ」と思った。
「それじゃあ、ちょっときくが、奈良の大仏様の釣鐘が、この間の大風でどこかへ飛ばされてしまった。お前知らないか?」
 すると小娘は、「そういえば、この間、どこからか釣鐘が飛んできて、軒下の蜘蛛の巣にひっかって、一日中鳴ってたなあ。でも、いつのまにか、またどこかへ飛んでっちゃった」といった。
 関西一のほら吹き名人はこれを聞くと、
「こんな小娘がこれほどのほらを吹くんでは、おやじはどんなおおぼらを吹くかわからない」と思って、そのまま帰ってしまったというはなし。
 この話では、上方一のほら吹き名人という言い方が多いので、もし子どもたちが上方という言葉がわかる場合には、そのほうが雰囲気が出ていいでしょう。伝承された話には、今では見られない小道具が登場したり、理解できない出来事が起きたりすることがあります。そうすると子どもの興味は薄れてしまうので、わかりやすい小道具、わかりやすい出来事の話を選ぶ必要があります。



UBBELOHDE:のらくらものの天国の話
BACK    NEXT




Web子どもと昔話 ││ 昔話の道しるべおはなしの小道
topへ