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昔話の道しるべ 小澤俊夫の昔話エッセイ GUIDEPOST FOR FOLKTALES

第38回 このはしわたるな
 昔話は口伝えされてきたので、目で読むよりも、耳で聞くほうがずっと楽しめます。子どもたちは、お話を語ってやったり、読んでやったりすると、驚くほどよく聞きます。特に、普段身近にいる親や先生が語ってやると、嬉しいのです。たまには授業と関係なく、自分のなまの声で、お話を聞かせてやってください。
 わざわざ覚えようとしなくても覚えられるような、こんな話はいかがでしょう。
 むかし、あるお寺に和尚さんと三人の小僧さんがいた。ある日のこと、村で法事があり、和尚さんが出かけることになった。和尚さんは小僧たちに、
「わしはひと足さきに出かけるから、おまえたち、本堂を片付けて、法事に遅れないように来いよ」
と言って、出かけていった。
 三人の小僧は、本堂を片付けてから出かけた。法事のある家の近くまで来ると、川があり、橋がかかっていた。三人は橋を渡ろうとしたが、そこに立て札が立っていて、「このはしわたるな」と書いてあった。
 ふたりの小僧は、
「はしを渡っていけないのなら、仕方ない、川を渡っていこう」
と言って川にはいり、じゃぶじゃぶと渡っていった。
 ところが、一番小さい小僧は、立て札の前にじっと立っていた。しばらくすると、橋の真ん中を歩き出した。そして無事に橋をわたると、法事のある家に行った。和尚さんは、一番小さい小僧が来ると、すぐに聞いた。
「おまえ、下の川の橋に、このはしわたるなと書いてあっただろう。それなのに、どうやって渡ってきたのだ」
と聞いた。すると一番小さい小僧は、
「このはし渡るな、と書いてあったので、わたしは橋の真ん中を渡ってきました」
と答えましたとさ。
 この話は、前回紹介した「どっこいしょ」の話とともに、日本全国でよく知られた話です。一番小さい子が、知恵を出して、障害を乗り越えていくところが、子どもたちに受け入れられたのでしょう。昔話は常に一番小さいものが主人公になります。一番小さいということは、端っこにいるということです。つまり孤立的な存在です。子どもたちから見ても、一番小さくて、発言もなかなか認めてもらえないであろう子が、人より優れた知恵を出した、というストーリーは、白分たちの置かれている立場を暗示しているようで、忘れられない話なのではありませんか。






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