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昔話の道しるべ 小澤俊夫の昔話エッセイ GUIDEPOST FOR FOLKTALES

第28回 主人公中心の空想物語
 昔話は時間さえもその継続性を無視して、点として語ることを前回述べました。ひとことで言えば、昔話は全くの空想物語なのです。
現代は科学の時代と言われているので、合理的思考が求められます。しかし、人間にとって一方では、自由な空想を広げることも大切なことです。特に子ども時代に、空想の世界をたっぷり楽しむことは、その子の人格の形成にとても大切だと思います。昔の大人たちはそれを知っていたから、昔語というこんな空想物語を子どもに聞かせることをやめなかったのだと思います。
 昔話は、そういう空想の世界で、主人公を自由に行動させます。それは、主人公中心性の強い物語です。特に子どもや若者が主人公の場合、昔話はその主人公が様々な課題を背負って、あるいは様々な困難を乗りこえて、幸せに向かって進んでいく姿を語るのを好みます。
 イギリスの有名な昔話「かしこいモリー」を例として考えてみます(全訳は東京こども図書館『おはなしのろうそく』第一巻にあります)。
 貧乏ゆえに森に捨てられた三人娘は、山の中の一軒家(孤立性)に泊めてもらいます。ところが、それは人喰い大男の家で、大男にも三人の娘があります(状況の一致)。モリーたち三人娘は大男の娘のベッドに入れてもらいます。夜になると大男は、目印にと自分の娘たちの首には金の鎖を巻き、モリーたちの首にはわらなわを巻いておきます。ところが、それに気づいたモリーは、自分たちのわらなわと大男の娘の金の鎖を入れ替えておきます。
 夜中、大男は手探りでわらなわの巻いてある娘たちをこん棒で叩き殺します。モリーたちはその家を脱出します。森を抜けると宮殿があり、モリーは王様に自分たちの境遇を話します。王様は「おまえは賢い娘だ。だが、その大男の枕の上にかかっている刀を取ってきたら、おまえの一番上の姉をわしの長男の嫁にする」と言います。モリーは大男の家へ戻り、刀を盗んで逃げます。途中に「髪の毛一本橋」があり、モリーは渡れましたが大男は渡れません。モリーは無事王様のもとへ刀を持っていき、長姉が王の長男と緒婚します。
 二回目には、枕の下の財布を取ってこいと言われ、取ってきて次姉が王の次男と結婚します。三回目には、大男が指にはめている指輪を取ってこい言われます。指輪を大男の指から抜き取ろうとしたとき、大男が目を覚まし、モリーは腕をつかまれます。
「お前がわしにしたほどひどいことを、もし、わしがお前にしたら、お前はどうするか」と聞かれたモリーは「あんたを袋に入れ、森に行って大木を抜いてきて袋の外からぶっ叩くわね」と言います。大男が大木を取りに森へ行ったすきに、モリーは大男の妻をだまして袋に入れます。大男が帰ってくると、袋の外から大木でぶっ叩きます。妻は「私だよ」と叫びますが、大男には聞こえません。その間にモリーは無事、王様の所へ逃げ戻り、王の三男と緒婚したという話です。
 このモリーについての評価は様々なようです。昔話の主人公としてのモリーの行動を次回検証してみましょう。


UBBELOHDE:のらくらものの天国の話
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