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昔話の道しるべ 小澤俊夫の昔話エッセイ GUIDEPOST FOR FOLKTALES

第19回 「三匹のこぶた」からのメッセージ(1)
  イギリスの昔話「三匹のこぶた」は、イギリスでは子どもたちに大変人気のある話です。日本でもいろいろな出版社から絵本化されて出されていますが、大切なところが作り変えられている場合が多いのです。
 オリジナルはこんな話です。母ぶたが、「もう、一人でやっていきなさ
い」と言って、三匹のこぶたを世の中へ出す。一匹目のこぶたは、わらで家をこしらえるが、狼にその家を吹き飛ばされ、食べられてしまう。二匹目もはりえにしだで家をこしらえるが、狼に食べられる。三匹目はレンガの家をこしらえたので、家を吹き飛ばされることはない。狼は何とかしてこぶたを外へ誘い出して食べようと企むが、そのつど、こぶたに裏をかかれる。しまいに狼は腹を立てて、「今夜、おまえの家の煙突から入って、おまえを食べちゃうぞ」と言う。こぶたは煙突の下の大鍋に熱湯をわかしておく。狼が煙突から降りてきた時、こぶたが鍋の蓋を取ると、狼は鍋の中へ落ちる。こぶたは狼をぐつぐつ煮て晩ご飯に食べてしまった(全訳は、石井桃子訳『イギリスとアイルランドの昔話』〔福音館書店〕に収められている)。
 この話は、狼がこぶたを食べ、三匹目のこぶたが狼を食べるので、残酷な話だと受け取られ、改作されることが多いのです。しかし私は、この話には生命はどうやって成り立っているかを物語る大切なメッセージが込められていると考えています。
 この話はとどのつまり、こぶたと狼との食うか食われるかの物語です。動物の生命というものは、ほかの動物の生命をもらって成り立っているんだよ、という物語です。
 弱肉強食ということは生命の真実としてよく知られています。この言葉は動物の生き方をよく表している言葉です。この言葉をストーリーにすると、こういう物語になるわけです。だから、この物語は、動物の生命の真相を語っていると言えます。
 世の中によく出回っている改作絵本では、一匹目のこぶたは二匹目のこぶたの家に避難し、やがて一匹目と二匹目は共に三匹目のこぶたの家に避難することになっています。そして最後には、狼は鍋の中に落ちるけれど、火傷を負って山の中に逃げていったとか、こぶたたちに「もう悪いことはしません」と謝って、山に帰って行ったなどとなっています。
 相手を食べるというのが残酷だからと考えて、このように改作したのでしょう。しかし、これでは生命の真相を伝えることはできません。生命のあり方について、うそを教えることになってしまいます。
 人間もほかの動物を食べて生きています。その意味では、人間も残酷さをもっているのです。昔話はそれを真正面から語っています。もちろんその時、前に書いたとおり、中身を抜いて抽象的に語るのです。
 
UBBELOHDE:のらくらものの天国の話
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