Web子どもと昔話 ││ 昔話の道しるべおはなしの小道


昔話の道しるべ 小澤俊夫の昔話エッセイ GUIDEPOST FOR FOLKTALES

第13回 「三びきのやぎのがらがらどん」が好かれる理由
 ノルウェーの昔話「三びきのやぎのがらがらどん」の絵本は、子どもたちに大変人気があります。なぜそんなに人気があるの
か、昔語の語りの法則という観点から点検してみると、この絵本は昔話の語りの法則をずばり満たしていることがわかります。子どもはそういうことを、無意識のうちに感じとっているのだと思います。
 渡る橋は一本しかないし、渡っていくやぎも一ぴきずつです。昔話には主人公や敵や大道具、小道具を孤立的に語るという法則があります。そして、渡っていく順序は小中大とクレッシェンドしています。音楽と同じなのです。
 トロルがやぎを食べるぞと言い、やぎが答えるやりとりは、三回ともほとんど同じ言葉で行われています。昔話は、同じ場面は同じ言葉で語るという法則をもっています。「白雪姫」で女王が鏡とやりとりをする言葉、白雪姫に、一回目はひも、二回目は櫛、三回目はリンゴを売りつけるやりとりも、ほとんど同じ言葉です。
 一番大きなやぎがトロルと戦って打ち負かします。この場面は、リアルに考えたら血なまぐさい、すさまじい場面になるはずですが、昔話は決してリアルには語りません。中身を抜いて、戦った、谷底へ突き落としたと語るだけです。マーシャ・ブラウンの絵もそれを心得ていて、まるでトロルを切紙細工のように引きちぎっています。血なまぐさくないのです。いい絵本にはそのような配慮がきちんとできています。
 場面構成をみると、どの場面も、やぎとトロルとの一対一でできていることがわかります。これも昔話の法則の一つで、例えば「白雪姫」の場合も、女王と鏡、女王と狩人、狩人と自雪姫、白雪姫とこびと七人(一グループを成しているので一単位)、白雪姫と行商人の女という具合です。
 このようなシンプルな場面構成だから、口で語られ、耳で聞かれても分かりやすかったのです。そして、幼い子たちにとっても分かりやすいというわけです。
 絵本の終わりに、「あぶらがぬけていなければ、まだふとっているはずですよ。そこで、チョキン、パチン、ストン、はなしはおしまい」という言葉があります。昔語は架空の語なので、こうやって架空の世界が終わったことを宣言するのです。日本の各地にもこのような結末句があります。岩手県遠野では「どっとはら」と言って終わります。新潟では「これでいちごさけた、どっぺん」などと言います。ヨーロッパには「二人はめでたく結婚しました。死んでいなければまだ生きていることでしょう」などという、ふざけた結末句もあります。


 『三匹のやぎのがらがらどん』
 ■絵 マーシャ・ブラウン
 ■訳 瀬田貞二
 ■福音館書店 1050円 
 
UBBELOHDE:のらくらものの天国の話
BACK    NEXT




Web子どもと昔話 ││ 昔話の道しるべおはなしの小道
topへ