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昔話の道しるべ 小澤俊夫の昔話エッセイ GUIDEPOST FOR FOLKTALES

第12回 素朴に読み聞かせ、語り聞かせる大切さ
  昔語には耳で聞いて分かりやすい語り口(文体といってもいいのですが、昔語はもともと書かれた文ではないので、語り口という方がいいように思います)があることはすでに述べました。
 このことについて興味のある読者は、『昔話の語法』(福音館書店)を読んでいただくと、詳しいことが分かります。この本は、私の永年の研究をまとめたもので、まず昔話の実例によって昔話の語りの法則を解説してあります。そして、語り口研究の歴史、その頂点を成すスイスの学者マックス・リュティの理論の解説、そして昔語のもつ音楽的性質の解明に至ります。
 昔話は子どもや若者が、いろいろに変化しながら成長する姿を語るということも、すでにいくつかの例によって述べました。このことに興味をもたれる読者には、『昔語が語る子どもの姿』(古今社)を読んでいただきたいと思います。この本は、成長する子どもの姿の問題と、昔語は残酷かという問題についての私の考えを述べたものです。
 昔話のもつ独特な語り口を守った再話を子どもたちに読んでやりたい、語ってやりたいと思われる読者には、『日本の昔語』全五巻(福音館書店)をお勧めします。この本は、私が北海道から沖縄まで、全国のよい語り口の昔話を選びだし、その語り口を守って標準語に再話したものです。三〇一話が収められています。作家による再話のように装飾的な、いわゆる文学的な文体ではありませんが、昔話らしい簡潔さをもっているために、読み聞かせにも語りにもよく使われています。


俳優のように読み聞かせる必要はありません

 子どもは、なまの声でお話を聞くのが好きだということは、前回述べました。
 では、おとなはどのように読んだらいいのでしょうか。
 この時、しばしば陥る過ちは、俳優のように声色を変え、手振り、身振り、顔の表情まで使って読まなければならない、語らなければならないと思うことです。農村での伝承はそうではありませんでした。もちろん語り手の性質により多少の幅はありますが、全体としてみれば、物静かに、ふつうの声で語っていたのです。やまんばの声と子どもの声では多少変化をつけたりしますが、それもごく自然な範囲でした。心をこめて、自然に語るのが、昔話の語り方です。
 それでも子どもは、なまの声と物語の力に吸い寄せられて聞きます。逆に大げさな身振りや派手な声色を使うと、子どもはそのことに喜びますが、肝心の物語全体は心に残らないのです。派手に「キャーツ」という喜びはテレビでも得られるし、イベントでも得られます。けれども、なまの声の物語にじっと耳を傾ける喜びは、お話を聞くことでしか得られません。
 今、子どもたちにそういう喜びと体験する機会をつくってやることが大切なのではないでしょうか。

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